season
〜春馬side〜
目の前で真っ青な顔をした女子生徒。
何でここにナツが…?
それが、一番初めに思ったことだ。
「須賀ちゃん?どうしたの?」
ナツと一緒にいた生徒が、心配そうに俺を覗き込んだ。
「え?ああ…何でもない。」
どうか、ナツに似た人であってほしい。
そんな思いを抱いたけれど。
「そうだ!須賀ちゃん、紹介するね。私たちの大事な友達。しばらくお休みしてたんだけど、今日から復活したんだ!ほら自己紹介は?」
「…瀬名………夏海です…」
目の前の彼女は、振り絞るような声で、俺のよく知る名前を名乗った。
……だよな。
現実逃避するなよ、俺。
「夏海、こっちは数学の須賀春馬先生!…………秋山先生の後任…の。」
ナツと一緒にいるもう一人の生徒が、少し言いにくそうに俺を紹介した。
それを不思議に思っていると、廊下の向こうからやってきた、少し派手めな女子生徒が走ってきた。
「ちょっ、須賀っち!この子に近づかない方がいいよ!?だってこの子、須賀っちの前の数学の先生とデキてたんだからさ!」
「……え?」
ナツが過去を話したがらなかった理由。
それが、この話?
「ちょっと、いい加減なこと言わないでよ!」
ナツの友達が言い返す。
「じゃあ何で今まで休んでたわけ?後ろめたいことがあったからでしょ?」
彼女たちも負け時と言い返す。
そんな中…
「……やめて、もういいから……」
一生懸命自分を庇う友達を静かに制したナツ。
俺たちから背を向けて行ってしまった。
「待って夏海!……じゃあ須賀ちゃん、また後で!」
「お、おう…」
かける言葉が見つからなかった。
未だに状況が飲み込めないでいる。
「気をつけなよ?須賀っち。あの子、ちょっと頭が良くてかわいいからって、先生達にチヤホヤされてんだから。」
違う。
ナツはそんな子じゃない。
…って言いたいのに。
それが言えないのは、俺たちはあくまでも今日が“はじめまして”だからだ。
昨日まで“恋人”だったナツが、今日になって突然“生徒”だもんな。
………何なんだよ、これ。