season
「…前任の秋山先生と噂があったっていうのは聞いた。」
本当は、もっと色んなことを聞いたけど。
いや、聞かされた…と言った方が正しいかな。
俺は正直、そういう話は聞きたくなかったんだ。
この現実と向き合うのが、怖くて。
「…私が今日学校に久々に行ったことで、またみんながいろいろ噂すると思う。それで遅かれ早かれ、わかることだから…今、言うね。」
ゴクリと唾を飲む。
しかし、語られたのは予想していたものとは違っていた。
「秋山先生との噂では、私が先生と抱き合ってたとかキスしてたとか言われてるみたいだけど、ほんの一瞬、手を繋いで寄り添ったくらいしかないの。確かに、尊敬を超えた思いがあった。その当時は“好き”なんだと思ってた。だけど…春馬くんに出会って、わかったの。」
夜空を見上げていたナツが、俺を見た。
「…わかったって、何が?」
「人を好きになる気持ち。」
そう言って重なる、俺とナツの手。