season
亀裂
「…もうこんな時間か。送るよ、ナツ。」
壁に掛けられた時計を見て、春馬くんが呟いた。
まだ一緒にいたい。
…そう言えない思いを、飲み込む。
すると…
「…本当は帰したくないけどね。」
そう言ってはにかむ春馬くんの笑顔が、可愛かった。
「…私も帰りたくない。」
そう言って、車のキーを手に取る春馬くんの腕にそっと触れた。
「んー…じゃあ、冬休みになったらどこか遠くへ旅行に行こっか。」
「本当っ?」
わがままな私の心をいつでも満たしてくれる春馬くん。
「行きたいところ考えとけよー。」
その言い方が、授業の時の口調に聞こえた。
「はぁい、先生。」
わざと先生って呼んだ私に…
「“先生”呼びはダメ!学校で思い出しちゃうだろぉ…」
…なんて言いながら、私の耳元で吐息を吹きかけるように囁いた。