僕らの命は 【 短編小説 】
⌜シロ!⌟
その声でハッと我に返った僕。
⌜……えっ……⌟
⌜大丈夫か、牙出てるぞ……⌟
クロさんが、心配そうに言う。
⌜……あ……すみません……つい……。大丈夫です、本当ごめんなさい。⌟
⌜いやいや、オレは大丈夫だ。それより……⌟
ちらっと、クロさんが視線をやったのは…………ミケだった。
ミケを見ると、クロさんの後ろに隠れて小さく震えている。
僕の態度の変わりように、ひどく驚いたようだった。
しまった、と思った。
⌜ミケ……ごめんね。怖がらせちゃって……⌟
ミケは、クロさんの後ろから一歩ずつ出てきてくれる。
⌜……シロしゃん、ボクがそばにいるから……もう捨てられることはないでしゅよ……ボクがシロしゃんを守るでしゅ……だから…………泣かないでくだしゃい…………⌟
ミケは、ゆっくりと僕のの方に近づき、そう言った。
そして、ミケは僕の足に、すりっと擦り寄ってくれる。
前に、「僕には敬語を使わなくていいよ」って言ったのに、慣れない敬語を使ってきて。
それに……「泣かないで」なんて。
僕は泣いてなんかいない。
客観的に見ると、「怒っている」ように見えていたと思う。
なのにミケからの言葉は、違っていた。
「怒っているのに、泣いている」
そう言われたように感じた。
僕は、泣いていたんだろうか。
心の中で。
⌜ミケ…………ありがとう。⌟
僕はミケに微笑んでみせると、ミケは嬉しそうに微笑み返してくれた。
考えるのはよそう。
僕は今、クロさんとミケがいて、幸せに生きているんだ。
人間と関わることは、もうない。
人間から関わってこようものなら、僕たちから離れる。
危険な目に遭わないように。
僕らで助け合って、これからも生きていくんだ。