僕らの命は 【 短編小説 】
てくてくと歩き続け、やっとクロさんの足が止まった。
⌜ここだ。⌟
クロさんの目線の先には、しんと静まり返った暗い路地裏。
クロさんが言っていた通り、人が通れなさそうな道幅だ。
ここなら、確かに安全かもしれない。
他の猫が縄張りにしている様子もなさそうだ。
クロさん、ミケ、僕の順番で、路地裏へと入っていく。
⌜おや、その後ろ姿と毛並みは……クロかい?⌟
背後から声をかけてきたのは、茶色い虎模様を身体にまとった猫だった。
もうだいぶ年老いているように見える。
⌜……トラさん?⌟
クロさんが振り向いて、その声をかけてきた猫に反応した。