僕らの命は 【 短編小説 】
⌜シロ、ミケ⌟
クロさんが、どこからか帰ってきた。
⌜クロさん!どうかしましたか?⌟
⌜いや、それがな、最近この辺で人間がうろついてんだ。それもオレたち“猫”を探しているみたいだ。そろそろこの縄張りから離れないといけない。⌟
クロさんは険しい表情を見せる。
⌜えっ、どうして人間が!ここはあまり人間が入ってこない場所じゃ……⌟
⌜そうだったんだがな。状況が変わったらしい。⌟
⌜しかもなんで僕たち“猫”を……⌟
⌜よくわからないが、探されているのは確かだ。捕まれば何されるかわからない。今日中にでも場所を変えよう⌟
⌜わかりました。⌟
クロさんの指示通り、僕たちは今日この縄張りから離れることになった。
僕が小さい頃から、何回か縄張りを捨てては新しい縄張りを見つけてというのを繰り返してはいるけど。
だいたいは、人間の子供に見つかってイタズラされるからとか、カラスが集まるようになったからとか、そういう理由で住む場所を変えていたけど……。
わざわざ人間が僕たちのことを探しているからという理由で住む場所を変えるのは初めてだ。
なんだか、胸がざわつく。