僕らの命は 【 短編小説 】
ミケと僕はクロさんの後に続き、てくてくと新しい住み場所へと向かっている時だった。
ポツポツと、雨が降り出してきたのだ。
⌜ひとまず雨宿りでもしよう。あそこの車の下に入り込むか⌟
クロさんはそう言い、僕たちを引き連れて一軒家の駐車場に止まっている一台の車の下に入り込んだ。
⌜雨が止むまでとりあえずここで待機だな⌟
⌜そうですね。早く止まないかなぁ⌟
人の気配は少なく、車も動く様子はない。
僕たちは雨が止むまで車の下にいることにした。
⌜クロしゃんシロしゃん、にんげんって怖いの?⌟
ミケが、僕たちに聞く。
まだ子猫のミケには、人間の恐ろしさを知らない。
この世界で怖いものは、人間だけではない。
だけれど、一番僕たちに身近なのは人間。
関わり合おうと思えばいくらでも関わり合える距離にいる。
だからより一層“怖い”のだ。
カラスとかならば敵か味方かなんて、行動を見れば一瞬で判断できる。
だけど人間は、「騙す」という猫からすればハイスペックな知識を使いこなしてくる。
餌で引き寄せ、優しくして可愛がるフリをして、最後には突き放し手荒な行為をする。
僕たちに情が芽生えた頃には、人間からは裏切られるのだ。
僕は、そのようにして傷つけられていた猫を、たくさん見てきた。
……ミケには、傷つかないためにしっかりわかってもらいたい。
だけど……どう話せばいいのか……。