僕らの命は 【 短編小説 】
⌜人間とオレたちとじゃ、住む世界が違うからだよ⌟
そう口を開いたのはクロさんだった。
⌜住むせかい?⌟
⌜……人間だからといって、みんながみんな怖いわけじゃない。
心優しい思いやりのある人間はたくさんいる。
だけどそれと同時に、オレたちを「物」として扱う人間もいるんだ。
同じ命を、「命」と見ない人間がな。
自分とは違う形をした生き物の価値は、ひどく低いものだったりする。
人間同士でさえ傷つけ合うんだ。
オレたちの命なんて、到底人間の位には立てやしない。
……それに、いくら心の優しい人間だったとしても
その心優しい人間は、時に豹変する。
自分の都合が悪くなれば、いくらでも“こちら”を壊しにくるんだよ。
だから結論としては、「関わらない」のが一番安全ってこと。
わかる?⌟
クロさんが言う「心優しい人間」は、昔の飼い主のことだろうか。
僕は捨てられた記憶しかないから、心から可愛がられた記憶はない。
だけど、いくらクロさんだって捨てられたと言っても、人間に心から可愛がってもらえた記憶があるなら、それはきっと…………
今の話は、とても心苦しい話だろう。
きっといろんなものを見てきて、今の言葉があるんだ。
クロさんの見てきた世界はどれほど綺麗で、どれほど残酷だったのだろう。
僕にはそれは、わからない。