人工知能な女の子

目的地

「それでどこに連れて行ってくれるんですか?」
しばらくしてセンカが訊ねてきた。


まさか遊びに行けることになると思ってなかったから全く考えていなかった。しかし、候補がないわけではなかった。


「遊園地なんてどう?」
紛れもなく僕自身が行きたい場所だった。



「遊園地ですか。どんな施設かくらいかは知っていますが行ったことはないです。でもなぜ遊園地なんですか?」
彼女の反応は悪いものではなかった。



「僕が最後に遊園地に行ったのが小学生の頃で、その時はまだ背が低くて全然楽しめなかったんだ。だからいつか行きたいと思ってたんだけど機会がなくて。もし良かったら一緒にどうかな?」


「そういうわけでしたか。初めての私と遊園地にいい思い出のないナルセさん。悪くない組み合わせだと思います。」


ということは…?僕は訊ねた。


「遊園地、一緒に行きましょう。」
彼女は微笑んだ。


今日は行き先だけを決めてセンカと別れた。
しばらく平静を装っていたが彼女と遊びに行ける喜びがふつふつと湧いてきて、家に着いた頃には鼻歌交じりにスキップをしていた。母親は気味が悪そうにこちらを見ていたが、今の僕にはそんなもの全く気にならなかった。


少しでも円滑にことを進めようと部屋に入った後、場所の目星と交通手段を調べるためにパソコンを起動した。


どうやらここから1番近くにある遊園地は僕が昔行ったことのあるところのようだ。そこまで規模の大きい遊園地ではなく、定番のアトラクションと売店、レストランがあったくらいだった気がする。


さらに調べてみると、比較的大きな遊園地も行けないことはない距離にあるようだった。


僕はふと折角一緒に行けることになったセンカに距離を理由に断られるのではないかと考えた。

…彼女ならありそうだ。「大きい遊園地」は魅力的ではあったが、距離を優先することにし、昔行った遊園地を候補に挙げることに決め、満足して交通手段を調べることなくパソコンを閉じた。
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