人工知能な女の子
主観と客観
この日は久しぶりにススキと帰った。以前ススキに誘われたのを断ったので、今回は僕から声をかけた。彼は「しょうがねーなー。」と言いながら驚くほど手際よく荷物をバッグに詰め込んだ。普段僕から誘うことは少ないから嬉しかったのかバッグに荷物を詰める際彼は終始ニヤニヤしていた。正直気持ち悪かった。

…冗談はさておき、帰っている途中でセンカの話になった。
「センカさんって本当に可愛いよな。」ススキがそう切り出したのが始まりだ。


可愛いことに間違いはないのだが、なんだか身内を褒められているような気分になり「そうか?」と曖昧な返事をしてしまった。


「そうか?ってお前…。芸能人でもおかしくないレベルの容姿だぞ。加えて着飾ってないというか、クールな感じなのがいいよなぁ。まあ話したことないんだけど」


相変わらずよく喋るやつだ。そんなに喋って疲れないのかと毎回思う。センカがクールなのは間違いないのだが、他者に興味がないのがクールたる所以だということは身をもって知っている。


適当に相槌を打ちながら話を続けていると、ススキがこちらに話題を振ってきた。


「お前最近センカさんとよく話してるよな?お前らって反りが合わない感じするのにどんな接点があったんだ?」


ススキは意図していないのだろうがこちらが答えに困るような発言をする時がある。よく話すことを隠す必要はないのだが、「センカは実は人工知能で僕はその監視役なんだー。」とは言えない。

「たまたま学校に早く行った日にセンカも教室にいて話したことがキッカケ」だと言っておいた。その話を聞くとススキは「センカさんを呼び捨てとはそこまでの関係でしたか!かーっ!お前も隅に置けないねぇ!」と叫びだした。
そして思い出したかのように「なんだなんだ、朝早く学校に行くとセンカさんと話ができるのか?」と言った。

しまった、言わなければ良かったかもと後悔したが、僕の表情をみて察したのかススキは「安心しろ、朝早く行ってセンカさんとお前のあまーい時間を奪うようなことはしねえからさ。人の恋路は邪魔しねえよ。」とケタケタ笑っていた。


そんなんじゃない!と否定するとススキはニヤニヤしながら、じゃあ俺はこっちだから、がんばれよー。と行ってしまった。


センカの話題を振ったのもこれが言いたかっただけだろう。


…なんだかどっと疲れた。本屋にでも行こうかと思っていたが、まっすぐ家に帰って休むことにした。
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