人工知能な女の子
意外な考え
数日経ったある日通っている学校で突然、編入生の紹介があった。女の子だといいなー。なんて思いながら編入生が教室に入ってくるのを待っていると、扉が開いた。
編入生の顔を見た時思わず声を上げてしまいそうになった。
察しのいい人なら気付くかもしれないけど、編入してきたのは・・・
そう、センカだった。
教師に促され少し気だるそうに自己紹介をすませた彼女は教室扉近くの右前端の空席に座った。
どうやらそこが彼女の席らしい。こういう時は席が隣になる展開だと思っていたのだが、僕の席は左後ろ端。
どうやら僕はそこまで主人公体質ではないようだ。
案の定休み時間は男子を含めたクラスメイトほぼ全員が彼女を質問責めしていた。
男子がセンカに興味を示すのも無理はない。セミロングの黒髪、白い肌、憂いな雰囲気を感じる黒い瞳。容姿は違和感なく人間だし、しかもかなり可愛い方の部類に入る。
自己紹介には人工知能であるという紹介もなく、1人残らず彼女を人間だと思っているだろう。
もちろん僕は彼女が人間ではないことを理解していたが、あらかじめ知っていなければ僕も間違いなく彼女を人間だと思っていただろうし、そもそも編入生や転校生を見て、「こいつ人間じゃないな?」なんて考える奴なんて1人もいないだろう。
彼女の話している様子を見ていると共通していることがある。
「それは表情が変わらない」ということだ。
彼女は 笑わない のだろうか。
それとも 笑えない のだろうか。
疑問に思ったがとても聞けるようなタイミングではなく今は胸にしまっておくことにした。
結局その日は学校で彼女と一度も話すことはなかった。帰り道偶然下校中のセンカを見かけた。
同じ学校に通っていても、意図しなければ案外下校のタイミングは重ならないものだから僕は思わず声をかけた。
「ナルセさん。こんにちは。」
一瞬歩みを止めてこちらに挨拶をすると彼女はまた歩き始めた。
僕は彼女の隣を歩きながら 一瞬に帰らないか と誘ってみた。
「どこかに寄り道するつもりでしたらお断りします。」
今日はもともと真っ直ぐ帰る予定だったため、寄り道をするつもりはないと彼女に伝えると、「では、断る理由もありませんし構いませんよ。」と言って少しだけ歩くペースを落としてくれた。
主に僕の方から話しかけ彼女がそれに一言二言で返答するという会話を繰り返していた。
彼女から編入試験の話を聞いた後、僕は日中抱いた疑問を訊ねてみることにした。
「センカって笑えないの?いつも無表情で淡々と話してるから」
しまった!いくらなんでもストレートに聞きすぎた。心の中でそう思った。上手い言い回しが見つからず失礼な聞き方になってしまった。
「そんなわけないじゃないですか。」
彼女は歩くのをやめて、そう言った。
「だったら尚更分からない。
なんで笑わないんだ?」
「笑う必要がないからです」
真っ直ぐこちらをみたまま言った。
「必要があるとか、ないとかじゃなくて、無表情のまま話を聞かれたら相手が不安になると思うんだ」
「そうなんですか?でも分かりません。なんで聞き手がそんなに気を使ってあげなければいけないんですか?」
自らが「必要ない」と判断しているものを「必要ある」と言われ納得がいくまで質問をし続ける姿勢はさすがAIというべきだろうか。
「話し手は自分との会話を楽しんでほしいと思ってる。だからこそ聞き手は楽しめていることを伝える必要があるんだよ。それを簡単に伝える方法が笑顔だから、笑顔で話すことって大事なんだよ。」
ありったけの考えを伝えたが彼女の目は醒めたままだった。
「ご忠告ありがとうございます。でも、私にとって会話は楽しむものではなく、あくまでも学ぶための手段の1つです。会話の中で楽しいと思ったことや、楽しんでほしいと思ったことは一度もありません。」
彼女は一呼吸おいてもう一言付け足した。
「もちろん、今もです。」
そう言うと彼女は 私はこちらですので、さようなら。と帰っていった。
頼まれた付き添い役が前途多難になることを僕は薄々気付き始めていた。
編入生の顔を見た時思わず声を上げてしまいそうになった。
察しのいい人なら気付くかもしれないけど、編入してきたのは・・・
そう、センカだった。
教師に促され少し気だるそうに自己紹介をすませた彼女は教室扉近くの右前端の空席に座った。
どうやらそこが彼女の席らしい。こういう時は席が隣になる展開だと思っていたのだが、僕の席は左後ろ端。
どうやら僕はそこまで主人公体質ではないようだ。
案の定休み時間は男子を含めたクラスメイトほぼ全員が彼女を質問責めしていた。
男子がセンカに興味を示すのも無理はない。セミロングの黒髪、白い肌、憂いな雰囲気を感じる黒い瞳。容姿は違和感なく人間だし、しかもかなり可愛い方の部類に入る。
自己紹介には人工知能であるという紹介もなく、1人残らず彼女を人間だと思っているだろう。
もちろん僕は彼女が人間ではないことを理解していたが、あらかじめ知っていなければ僕も間違いなく彼女を人間だと思っていただろうし、そもそも編入生や転校生を見て、「こいつ人間じゃないな?」なんて考える奴なんて1人もいないだろう。
彼女の話している様子を見ていると共通していることがある。
「それは表情が変わらない」ということだ。
彼女は 笑わない のだろうか。
それとも 笑えない のだろうか。
疑問に思ったがとても聞けるようなタイミングではなく今は胸にしまっておくことにした。
結局その日は学校で彼女と一度も話すことはなかった。帰り道偶然下校中のセンカを見かけた。
同じ学校に通っていても、意図しなければ案外下校のタイミングは重ならないものだから僕は思わず声をかけた。
「ナルセさん。こんにちは。」
一瞬歩みを止めてこちらに挨拶をすると彼女はまた歩き始めた。
僕は彼女の隣を歩きながら 一瞬に帰らないか と誘ってみた。
「どこかに寄り道するつもりでしたらお断りします。」
今日はもともと真っ直ぐ帰る予定だったため、寄り道をするつもりはないと彼女に伝えると、「では、断る理由もありませんし構いませんよ。」と言って少しだけ歩くペースを落としてくれた。
主に僕の方から話しかけ彼女がそれに一言二言で返答するという会話を繰り返していた。
彼女から編入試験の話を聞いた後、僕は日中抱いた疑問を訊ねてみることにした。
「センカって笑えないの?いつも無表情で淡々と話してるから」
しまった!いくらなんでもストレートに聞きすぎた。心の中でそう思った。上手い言い回しが見つからず失礼な聞き方になってしまった。
「そんなわけないじゃないですか。」
彼女は歩くのをやめて、そう言った。
「だったら尚更分からない。
なんで笑わないんだ?」
「笑う必要がないからです」
真っ直ぐこちらをみたまま言った。
「必要があるとか、ないとかじゃなくて、無表情のまま話を聞かれたら相手が不安になると思うんだ」
「そうなんですか?でも分かりません。なんで聞き手がそんなに気を使ってあげなければいけないんですか?」
自らが「必要ない」と判断しているものを「必要ある」と言われ納得がいくまで質問をし続ける姿勢はさすがAIというべきだろうか。
「話し手は自分との会話を楽しんでほしいと思ってる。だからこそ聞き手は楽しめていることを伝える必要があるんだよ。それを簡単に伝える方法が笑顔だから、笑顔で話すことって大事なんだよ。」
ありったけの考えを伝えたが彼女の目は醒めたままだった。
「ご忠告ありがとうございます。でも、私にとって会話は楽しむものではなく、あくまでも学ぶための手段の1つです。会話の中で楽しいと思ったことや、楽しんでほしいと思ったことは一度もありません。」
彼女は一呼吸おいてもう一言付け足した。
「もちろん、今もです。」
そう言うと彼女は 私はこちらですので、さようなら。と帰っていった。
頼まれた付き添い役が前途多難になることを僕は薄々気付き始めていた。