人工知能な女の子

教室にて

「ナルセさん、おはようございます」


こちらに気付いたセンカは相変わらずにこりともせず挨拶をしてきた。


「おはよう、、ございます。」

昨日のことがあった手前思わずこちらも敬語になる。

「どうしたんですか？敬語なんて使って。」

彼女の様子はいつも通りに感じられるが、「いつも」が無表情で敬語なので感情の判断が難しい。


今更出て行くのも不自然なので自分の席に移動し荷物を置いた。


「でも驚きました。ナルセさんって学校に来るのかなり早いんですね。遅刻ギリギリに来そうな方だなぁ と思っていました。失礼しました。」


図星だが笑ってごまかすことにした。これ以上好感度を下げることはできない。

「センカも早いんだな。イメージ通りだよ。」


「まだ道を覚えきっていないので。どこに何があるかを見ながら行こうと思ったので早く出たんです。少し早く着きすぎましたが…。」

というと彼女は というより と続けた。

「遠いです。どうして対角線で会話をしてるんですか。」

会話でいっぱいいっぱいだっため、そんな事を考える余裕がなかったが、お互いがお互いの席で話していたためかなりの距離での会話になっていた。


それもそうだ、と彼女のところに行くと彼女はありがとうございます。と頭を下げた。


「ナルセさん今日は顔色があまりよくないですね。」

1番気づかれたくない人に1番気づかれたくない事を気づかれてしまった。

ごまかすこともできず、昨日眠れなくて と話した。

「何かあったんですか？」

彼女は訊ねてくる。


「昨日のこと考えてたら眠れなくて。帰り道『笑うのか？』なんて聞いてごめん、その後の発言も含めて失礼なこと言ったと思ってる。」

僕の謝罪を聞いて彼女は口を開く。

「謝る理由なんてありませんよ。ナルセさんはナルセさんの考えを言っただけなんですから。私だって私の考えを述べましたし。寧ろ別の考えを学んだいい機会でした。」


ですが、彼女は続ける。

「全く気にしていませんでしたが、謝られたので許します。」と彼女は小さく笑った。

ほら、笑えるでしょう？

彼女が冗談めかして言った。
彼女の笑顔だけが強く印象に残っていて、この後した会話はほとんど覚えていない。

しばらくして、クラスメイトがポツポツ教室に来始め、センカのところに集まってきた。これ以上彼女と話すのは無理そうだと判断して、僕は自分の席に戻った。


自分の席に戻ってから僕はセンカの笑顔を思い出していた。

気持ち悪いかもしれないが彼女の笑顔がそれだけ衝撃的だった。本当に可愛くて自然な笑顔で普段それを見せないことが本当にもったいないと感じた。