海賊船「Triple Alley号」

当初入る予定だった町とは別に、小さな繁華街がありました。
そこでもやはり歓迎されました。どうも庶民はこの海賊団のことを悪く思っていないようです。それどころか、おもてなしまで受けました。町の子供達は僕らを尊敬の眼差しで見つめています。
海賊団が憧れの的になっているという事実に、僕は正直複雑な思いを抱きました。海軍の立場がありませんし、このままでは寧ろ悪者扱いまでされてしまいそうです。正義を掲げた海軍が悪者だなんて……冗談もいいところです。

マルクル大佐の計らいか、それからも度々海軍と遭遇しました。それは海上だったり町中だったりと様々でした。海上の時は「203㎜連装砲」が火を吹くのですが、町中では逃げながら抗戦して船に飛び込み、「連装砲」で追い払いながら猛スピードで逃走するのです。やはり人同士の直接的な戦闘を避けていました。「虎」のトラウマのせいかと思いましたが、どうやら捕まるのを恐れているという感じでもありません。それが何故なのかさっぱり分かりません。
マルクル大佐に訊くと、意外な答えが返ってきました。
「こいつらは昔っからこんな戦い方をしやがる。海賊相手には堂々と出てくる癖に、俺達が相手となると途端に挑発行動に切り換えやがる。あのキテレツな大砲の強さを自慢しとるんだ。俺達を完全に舐めとる」
あれが挑発行為だったとは、驚きでした。確かに、よく考えれば海賊との戦いでは3船長が自ら手を下していました。海軍は船長が戦いに出る必要もない程弱いということでしょうか。どうもそれだけではないような気もしてなりません。海軍と衝突する時の「虎」の様子が脳裏から離れませんでした。
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