海賊船「Triple Alley号」
その夜、セレーネがマルクル大佐からの手紙を持って帰ってきました。海軍の情報かと思いましたが、それにしては重いような気がします。おまけに何だか分厚いです。
何事だろうと急いで開けると、手紙とは別に1枚の古ぼけた白黒写真が出てきました。若かりし頃の大佐と、幸せそうな家族が映っています。女性が赤ん坊を抱いていて、赤ん坊は泣いているようです。女性の顔に見覚えがありました。それも、つい最近どこかで会ったような……。
僕は思わず大声を上げそうになりました。ルナです。女性はルナにそっくりだったのです。震える手でマルクル大佐の手紙を取り上げ、じっくりと読みました。
『久々に家に帰って書斎を整理してたらこれが出てきた。コルーシ、お前の家は全部焼けちまったから、写真が残ってなかったんだ。唯一、この写真の中でだけお前のご両親に会える。お前の父さんとは昔馴染みでな、友人でもあったしライバルでもあった。母さんは近所でも有名な美人で、しかも賢くて品があって、町中の男共が惚れ込んでた。俺も例外じゃあない。お前の父さんに彼女を取られた時は、絶交しようとも思ったぐらいだ。しかし、彼女の幸せそうな様子を見りゃ、やつを恨む訳にもいかん。やつは堅実で努力家だったからな。2人は職場で出会ったんだ。互いに一目惚れだったんだと。本当に、お前のご両親は幸せな人生を送るはずだった。勿論お前だって……。まあ、あの時お前はまだ小さかったからな。もしかしたら両親の顔も覚えてねぇんじゃねぇかって思ったんだ。これを見て、あいつらの冥福を祈ってやってくれ。頼む。』
目頭が熱くなってきてどうしようもありませんでした。写真の中の両親は、とても優しい顔で微笑んでいます。何も知らずに泣いている赤ん坊を妬ましく思ってしまう程、両親に会いたいと強く思いました。
それと同時に、海賊への恨み辛みが込み上げてきました。僕は今すぐここを飛び出したいとさえ思いました。ルナを連れて、マルクル大佐の所まで逃げていきたくなりました。