海賊船「Triple Alley号」

3人の過去より「虎」の鼻の頭に傷があるかどうかの方が気になり、特訓中に何度もチラ見してしまいました。「虎」が鈍くて気付かなかったからよかったものの、もし変に勘繰られたら大変です。なるべく意識を向けないようにと思うのですが、それがかえって絆創膏に意識を向けさせてしまうのです。
訓練の後で「虎」が僕の中古の剣を改造したいと言ってきたときもそうでした。断りながら無意識に絆創膏を見つめてしまい、それに気づいて「虎」は首を傾げました。
「俺の顔に何かついてるか?」
慌てて何でもありませんと取り繕いましたが、よく考えてみれば「絆創膏がついてますよ」と言うぐらいは許されたのではないでしょうか。「虎」は思ったより穏やかでどこか抜けていますし(こんなこと言ったらシゲは怒るでしょうか…;)、もしかしたら絆創膏のことを訊いても何とも思わないでいてくれるかもしれません。しかし、僕には勇気が足りませんでした。

ファンなら何か知っているかもしれないという僅かな可能性を信じて、シゲとハルタに訊いてみました。
「え、絆創膏?さあ……それは俺も分かんねぇや……」
「オシャレの一環とか思ってるんじゃない?」
「いや、それはないってルナが…」
ルナと聞こえた途端に2人の表情が変わりました。今やこの2人にノロけ話をすることは不可能です。
「ご、ごめん!ノロけるつもりじゃなかったんだけど…」
「いや、俺はなーんとも思っちゃいねぇがな?」
「いいんだよ、別に。男ってそういう生き物だし」
「ハルタ、それ女の人が言いそうなことだよ…」
「別にいいじゃないか!!僕が女みたいだからって君には関係ないだろ!?」
「そんなこと言ったんじゃ……」
「まぁまぁ2人とも、ここは一旦落ち着けって。な?この菩薩のような俺様が仲裁してやろう」
「どこが菩薩……あ、髪型が?」
「別に俺の頭坊主じゃねぇよな!?髪の毛あるよな!?」
「菩薩にも髪の毛っぽいものはあるよ。ちょうどシゲみたいな感じの」
「てめぇそれは挑発か、あん?」
「ご、ごめんって2人とも!!僕のせいだよごめん!!」
仲が良すぎるからこその喧嘩でしょうが……そうだと信じています。
話が脱線したまま戻らなくなり、詳しいことは何1つ分かりませんでした。
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