バイバイ☆ダーリン 恋心編  番外編完結しました
日系メーカーへの営業から数ヵ月、話が何歩も進んだ上に、好条件の賃貸物件が見つかったこともあって、現地のコーディネータに入ってもらい、いよいよ開店準備に取り掛かるのだ。


東京の店は現在改築中で、1ヵ月程休業するために、理人の家族やアメリカに赴任予定の従業員とその家族が、入れ替わり立ち替わり渡米している。

空港からの送迎やホテルの手配から、赴任予定の人間のこちらでのすまいに目星を付けておいたりと、理人は多忙を極めていた。

今夜は料亭の長男である理人の兄と、料亭で女将修行中のその婚約者が2人してやって来た。

兄の聡也(サトヤ)と奏(カナデ)がアメリカにやって来て一番驚いたのは、理人本人が空港からホテルへの送迎やチェックインまでやってくれたり、夕食の手配など、至れり尽くせりで、やはりお前も料亭の息子だったかと感心させられる。

夕食は偵察のため、近隣の日本食レストランを予約している。

林葉兄弟とその婚約者は、今回の敵地視察を非常に楽しみにしていたのだ。

自分達が何処まで料亭として米国(ここ)で勝負できるのか、武者震いする兄弟であった。

店に入ると日本でもよく見るタイプの和食店で、メニューも日本人好みのものが多い。

注文したものも日本で食べられる類の料理で、さすがに美味しい。

ただ、一般的な和食店の域は出ておらず、日本人向けだけではなく、現地のアメリカ人富裕層向けにも、この和食レストランと住み分けすべきだと、2人は決めている。

『いよいよだな!』

聡也が理人に嬉しそうに言った。

『絶対にやってみせるからな』

弟の強い思いを聞いた兄は満足そうに笑い、奏のお酌を受けて、クイッと冷酒を飲んだ。

理人は運転手役なので、冷たい緑茶で喉を潤した。

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