バイバイ☆ダーリン 恋心編  番外編完結しました
理人と店のスタッフがその日の営業を終えてからの、特別に板さんが用意してくれた夜食は、拍手喝采を浴びる程のものだった。

若い日本人留学生には、自分の金で日本食レストランに行く余裕などないので、皆跳び上がって喜んだのだ。

美味しい美味しいと口にする皆に、口元が緩む板さん。

その後の話題は、日本人客からもアメリカ人客からも大人気だった彼女、上條美桜のこと。

皆が可愛いとか、着物姿が艶やかだとか、何だか他人に言われるとムカムカする理人だが、ある光景を目の当たりにして漸く腹が決まった。

同じ日本人留学生仲間でバイト仲間の男が、美桜にちょっかいを出していたところに、理人が遭遇してしまって、盗み聞きまでしている状況だ。

『美桜ちゃん俺たち付き合わない?君俺の好みなんだ』

理人が何となく違和感のあるこの感じは、かつて、自分自身が数多の女性を引っ掛ける時に言っていたようなセリフなのだ。

ああ、恥ずかしい…、こんなことをしていたのかと、愕然とする。

理人はまだ若くて青くて馬鹿でのぼせ上がっていた自分に、情けないやらなんやら分からない感情で、倒れそうになった程だ。

ああ、若気の至りなんてことでは済まされないぞと、落ち込んでいく。

イカンイカン、美桜を救出しなければと、姿勢を正して、彼女の元へと向かった。
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