Love palette
よほど診察に行きたくないようだ。
香織は昨夜の診察で一部の記憶を失くていることがわかった。
強いストレスが原因だろうと医師は言っていた。
「私は何を忘れているのかな。爽太は知ってる?私の足りない記憶」
香織の黒く透き通る瞳に見つめられ、吸い寄せられたように動けなくなった。
「さぁ?それは香織にしか分からないよ」
また、嘘を吐いた。
香織はそうだよね、とだけ言うと今度こそ看護師と病室を出て行った。