お見合いだけど、恋することからはじめよう
あたしは朝っぱらから、激務のためにふらっふらになって寝ていた姉の部屋を襲撃して、
「ねぇ、おねえちゃんっ、
……この服で大丈夫だと思う!?」
黒いニットの下の真っ赤なバイアスチェックのミモレ丈フレアスカートを翻しながら、一回転した。すべて、エフデだ。
「……ん……うるさいなぁ、なによ、七海」
いつもの整った顔からは想像できない、寝起きのブサイクな顔して、姉はむくっと起き上がった。
「あのねぇ……今日、田中さんとデートなんだ」
あたしはそんな姉には構うことなく、目の前でかわいくポーズをとる。
そんな妹の姿を、姉はほとんど開いていないしょぼしょぼした目で見ると、
「ふうん……いいんじゃないの?」
と、まーったく心のこもってない言葉を吐いて、またベッドに突っ伏した。
「もおっ、おねえちゃんったらぁ、ちゃんと見てよぉ〜」
あたしは口を尖らせて文句を言った。
すると、姉はがばっと、起き上がった。
「うるさいって、言ってんでしょっ!
わたしは眠くってしかたないんだよっ!
とっとと、田中とデートに行ってきなっ!!」
……怒られてしまった。
あたしはあわてて、オフホワイトのもこもこファーのフーデットコートを羽織る。