お見合いだけど、恋することからはじめよう
マンションのエントランスから外へ出ると、白いスポーツタイプのレクサスRC Fが停まっていた。
ツイードのジャケットにチノパン姿で、ナビシート側のドアにもたれて腕を組んでいた田中さんが、あたしに気がついてさりげない動作でドアを開ける。
「……お待たせしてすみません」
あたしは小走り気味に駆け寄り、ぺこっと頭を下げた。
「いや、こちらこそ、急な誘いで悪かったね。
……さぁ、乗って」
あたしが「お邪魔します」と言って乗り込もうとすると、「おれの部屋じゃないんだから」とくくっ、と笑われた。
とたんに、恥ずかしさのあまり、頬にほわりと熱を感じる。恋愛偏差値の低さをまざまざと露呈してしまった。
さらに田中さんは、あたしの頬に放火でもするようなことをつけ加えた。
「……ま、そのうち、おれの部屋にも来てもらうことになるだろうけどな」