お見合いだけど、恋することからはじめよう
エンドロールが流れる中、諒くんがハッと目覚めて、むくっと起き上がった。
「……わ、悪い。腹がいっぱいになったあとで、つい寝ちまった」
諒くんは決まり悪そうな顔をしていた。
……お見合い相手との初デートで、寝ちゃったんだもんね。
「映画、すっごくよかったです。マネージャーのポールにはムカついたけど。
……でも、ほとんど観てない諒くんのために、
DVDが出たらもう一度観なきゃなんないのね?」
あたしはふふっ、と笑いながら言った。
諒くんは虚を衝かれたあの顔をした。
たぶん、あたしが気を悪くしたと思ったのに、
まったく反応が違ったからだろう。
もしかしたら、以前にもこういうことがあって、女の人を怒らせてしまったのかもしれない。
「あたしは大丈夫です。気にしないで。
生まれたときから父を見てきて、どれだけお仕事がたいへんか、身をもって知ってるから。
うちの姉なんて、今朝あたしが出かけるときもまだ起きてこなかったくらいだしね」
今度はあたしが「大丈夫、気にするな」という番だ。
それでも、諒くんはやはりまだ気まずそうに苦笑していたが、
「……じゃあ、DVDが出たら、ボールがなにをしでかしたのか、おれの部屋で一緒に観ようか?」
その目だけは、いたずらっ子のようだった。