お見合いだけど、恋することからはじめよう
そして、今、あたしは諒くんに連れられて、銀座を代表する老舗デパートの松波屋のアクセサリーのフロアにいた。
「ななみんは今月の十七日が誕生日だろ?」
……釣書に書いてあったのを覚えてくれてたんだ。
ちなみに諒くんの誕生日は十一月で、あたしだって覚えている。
「ほんとはそのあたりでもう一度、デートしたかったんだけどさ。休日出勤が続くこのクソ忙しい最中の今月末に妹の結婚式があって、とてもじゃないけどもう休みが取れないんだ」
諒くんは残念そうに顔を歪めた。
「……だから、まだ二回しか会ってないおれのことを忘れないように、なにか身につけるものをプレゼントさせてくれ」
そう言って、あたしをジュエリーショップが立ち並ぶ一角へと促した。
「えっ、だって、そんな……」
突然のことにどぎまぎしながらも、諒くんの歩調に合わせて小走り気味についていく。
あらかじめどこで買うのかは決めていたらしく、国内のメーカーで最近あたしたちの年代で人気が高まっている「Jubilee」というジュエリーショップの前に来た。
「心配しなくていいよ。ハイブランドでもないし、それに、まだ指輪なんて重たいものはプレゼントしないからさ」
あのいたずらっ子の目をして、諒くんは笑った。