お見合いだけど、恋することからはじめよう
店内では美しくディスプレイされたガラスケースの向こうで、ここに並ぶジュエリーたちに負けず劣らぬ華やかな輝きを放つ女性が、スマホで通話していた。
「……あぁ、そうそう。そういう路線で考えてみて……うん、そうよ……あとは華絵に任せるわ……はい、じゃあね」
身長はヒールを履いて軽く一七〇センチを超えている。軽くウェーブのかかったブルージュの髪は、いかにも仕事のできるオトナの女という印象でありながら、黒髪のような重たさは一切ない。
あたしのコートと同じオフホワイトのパンツスーツは、すらりと伸びたその肢体にしなやかに沿って、彼女のすばらしさを最大限に引き出している。
……とにかく、一見しただけで、非の打ち所がないことがわかる女性だった。
そのとき、通話を終えた彼女があたしたちに気づいた。とたんに、大輪の花が咲いたかのような笑顔になる。
「……やっと来たわね。諒志」