お見合いだけど、恋することからはじめよう
「な……ななみん?」
久城さんは、ありえないものを見るかのごとく驚愕の表情を浮かべていた。
「『こんなヤツ』って言われて怒るところだけど、そんなこと言ってられないわね。
無機質な人造人間みたいにいつも理路整然と相手をやり込める諒志が、こんなに取り乱して支離滅裂な『弁解』をするのを初めて見たわ。
……しかも、『彼女』のことを『ななみん』呼びするなんて」
……あ、やっぱり『無機質な人造人間』の印象で見られてるんだ。
「久城、うるさい。黙れ」
また久城さんの方に向き直った諒くんは、血も凍る氷点下に逆戻りである。
「……諒くん、失礼だから」
あたしは諒くんのツイードのジャケットの袖口を、くいくいと引っ張った。
すると、あたしの方を見たとたん、諒くんの表情が和らぐ。
……器用だなぁ。
「……り、『諒くん』って」
久城さんはまた、ありえないものを見るかのごとく驚愕の表情を浮かべていた。