お見合いだけど、恋することからはじめよう

躊躇するあたしを尻目に、

「久城、これにする」

諒くんがいつの間にか取り出していたクレジットカードを渡す。

「えっ、えっ……諒くん、ちょっとっ!」

あたしはあわてて制止する。

「ななみんは気に入ってないのか?」

諒くんがあたしの顔を覗き込む。

「気に入ってるっ!
えっ、えっ、だけど……こんな高価なもの……」

あたしたち、出逢って、まだ二度めだよ?

「じゃあ、決まりだ」

諒くんはきっぱりと宣言した。

「田中さま、お買い上げありがとうございます」

久城さんが最高に美しい笑顔でクレカを受け取った。

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