お見合いだけど、恋することからはじめよう
「久城がおれの名前を呼び捨てにするのは、サークルの中にほかにも『田中』がいたからだ。よくある名字だからな」
諒くんが大きな手でやわらかく、あたしのココアブラウンの髪を撫でる。
「でも、ななみんが久城のようにおれを呼び捨てにしたければ、そう呼んでもいいぞ?」
あたしは、首を振った。
「……だれも呼んでない『諒くん』の方がいい」
すると、
「……ななみ」
と諒くんから呼ばれて、
……あれっ?「ん」はどこ行った?
そう思って顔を上げた瞬間。