お見合いだけど、恋することからはじめよう


「ただいま」とリビングのドアを開けて入っていくと、ダイニングでこれから水炊きを食べようとしていた両親と姉が振り向いた。

「……あら、もう帰ってきたの?夕ごはん食べてきた?」

母が手にしていた箸を置いて尋ねる。

「ううん。りょ…田中さんが、今日のところは早くうちまで送り届けるって。おとうさんの心証を悪くしたくないんだって」

あたしがダイニングの椅子に座ると、代わりに母が立ち上がって、あたしの分の呑水(とんすい)と箸を取りに行く。

……家族の前では恥ずかしいから「諒くん」と呼んでいることはナイショだ。

「……そうか」

父がにやっ、と笑った。

……諒くん、「作戦」は成功したみたい。
どうやら、ポイント獲得したようだよ?

「で、今日はどこ行ってきたのよ?」

姉がお鍋から鶏肉(かしわ)を取りながら訊く。

「えーっと、アクアシティでボヘミアン・ラプソディを観て……」

母が呑水と箸を渡してくれる。

「ラーメン国技館で豚骨ラーメンと一口餃子を食べた」

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