お見合いだけど、恋することからはじめよう
「ええええぇーーーっ!?」
姉が素っ頓狂な声をあげる。
「あの、無機質で人造人間な田中が……『ラーメン国技館』で豚骨ラーメンと餃子っ!?
そこって、フードパークじゃんっ?」
姉だけではなく、父までも「ありえない」という顔をして、鶏ミンチでつくられた華味鳥の華つくねをお鍋から箸で持ち上げたまま固まっていた。
……諒くん、庁内でも「無機質な人造人間」って言われてるんだ。
「『なにが食べたいか』って訊かれて、アクアシティだったから、どうしても食べたくなって逆にあたしが連れて行ってあげたんだけど?」
あたしはおたまで、白濁したお出汁を呑水に入れながら言った。うちの水炊きのお出汁はいつも、華味鳥の水炊きスープだ。
「だから言ったんじゃないの。諒志さんに失礼のないように、って」
母がほぉーっとため息を吐く。
「もおっ、失礼なことなんてしてないよー。
だって、田中さんは『フードパークやフードコートを侮ってた。こんなに本格的だったとは』ってびっくりしながら、豚骨ラーメンも一口餃子も『旨い、旨い』って食べてたもん」
あたしは口を尖らせて、華味鳥の白濁スープの中へ柚子胡椒を入れた。