お見合いだけど、恋することからはじめよう
「ちょっと、千夏……どういうことよっ?」
あたしは女子と生まれたからには必須アイテムである「声は出さずに息だけで言葉を伝達」する特技を使った。
「なんで、男子がいんのよっ!?
あたし、お見合い相手の人から『男の人がいる呑み会』は行かないように言われてんのよっ!」
千夏は一瞬、明らかに「なに、その独占欲?」という顔をしたが、すぐに、
「ごめんっ、ななみん。
あんたがもう三年もオトコ日照りだからさぁ。気を遣ったつもりだったんだけどねー」
クールビューティーな顔を歪めて拝み倒してきた。もちろん彼女も「女子特有の必須アイテム」を使って、である。
「違うっしょ?こんな時間だし、どう見ても、だれかドタキャンした子の穴埋めだよね?」
さすがに、ものすごーく腹が立ってきた。
千夏は「違う、違う」とぶんぶん首を振る。
あたしたちが個室の入り口でなにやらごもごも話していたのを不審に思ったのか、
「……なにしてんの?入ってきなよ」
と、中から声をかけられる。