お見合いだけど、恋することからはじめよう
……えっ、ウソでしょ? その声は、まさか……
記憶の底に沈み込ませて、上から漬物石を置いているはずなのに、一瞬で甦ってきた。
あたしは思わず声の主の顔を見る。
「……ななみんにはほんっとに悪いけど、ここまで来たんだから観念してよね?」
とたんにくるりと踵を返して外へ出ようとしたあたしを、千夏ががしっ、と掴んだ。
確か、女子ハンドボール部だったという千夏の握力、半端ないんですけれども。
「入ってきなよ……ななみん」
その人……目黒 毅は、にっこり微笑みながら、あたしの名を呼んだ。