お見合いだけど、恋することからはじめよう
「先輩、お子さんは男の子?それとも女の子?」
唐突に訊いてみる。
「……おれに似た、女の子」
目黒先輩がぼそり、と答える。
スマホのロック画面に設定してるくらいだから、かわいく思ってないわけないよね?
「もしさぁ、今夜、うちに帰ったら……」
あたしは大きな目をできるだけ細めて、にやり、と笑う。
「奥さんとそのかわいい娘ちゃんが、いなくなってたら……どうする?」
「……へ?」
そこそこイケメンの目黒先輩の顔が、世にも間の抜けた顔になっている。
「だってさ、奥さん、大学出たてでまだ若いのに、世間に出ることなく毎日家の中で『ワンオペ育児』状態じゃん?ましてや、夫婦仲もイマイチなんだから、いつ精神的に不安定になって、実家に帰ってもおかしくないよ?
いくら『折り合いが悪く』てもさ、実の娘がかわいい孫娘を連れて帰ってきたら、親としては無下にはできないもんねぇ」
……女ってのはね、
なーんにも言わないからって、
なーんにも考えてないわけじゃないんだよ?
しかも、その考えがまとまったら「即行動」だよ?男の人にしてみれば、それは「突然」にしか見えないだろうけれども。
「それから、子どもを持つ友達の受け売りだけどさ。出産してしばらくの母親って、子どもさえいればいいんだって。
だから、ダンナとのセックスなんてしちめんどくさい以外の何物でもないらしいよ?『レス』なんてあたりまえのことだってさ」
目黒先輩が、ごくっ、と唾を飲み込んだのがわかった。
「……もしかして、奥さんは、自分のダンナが、心の通わない『夫』で、育児に協力しない『父親』だったら、こんなのいない方がマシって思ってるかもよ?」