お見合いだけど、恋することからはじめよう
Chapter 4 ☆彡 元カレの赤木さん
❶
三月になった。
年度末になり、諒くんはますます多忙らしく、彼の週一の「安否確認」とあたしの折り返しの「業務連絡」以外のやりとりはない。
あっ、二月十七日にはさすがに、
【誕生日おめでとう。初めて迎えるななみんの誕生日なのに、やっぱり会えなくて悪い】
とメッセージがあったけれども。
おねえちゃんからは、
『あんた、誕生日なのに田中と会わないの?』
と訊かれ、思わず顔を曇らせたら、
『……ま、今のあいつの状況じゃ、無理だわね』
と察してくれた。
思えば、お見合いの日を入れても、諒くんとは……まだ二回しか会っていないのだ。
あたしは肌身離さず身につけている(さすがにお風呂のときと寝るときは外しているが)アメシストのネックレスに指で触れた。
誕生日プレゼントとして、諒くんにもらったものだ。いきなりJubileeに連れて行かれてプレゼントされたときはとまどったものだったが、今となってはよくぞ買ってくれました、だ。
ともすれば、夢まぼろしのように霞んでいきそうなあのデートの一日が、このネックレスのおかげで生き生きと甦ってくる。
そして、諒くんも、あたしがバレンタインのチョコレートの代わりにあげたスマホケースを見るたびに、こんなふうに思ってくれたらうれしいな。