お見合いだけど、恋することからはじめよう
その週の月曜日、出勤するとなんだか不穏な空気が漂っていた。
最近は、法務部へ行くことの多い島村室長の代わりに副社長室で業務することが多かった彩乃さんが、朝から秘書室であたしたちグループ秘書の仕事をしている。
婚約者である副社長と、なにかあったのかもしれないが、平静を装いながらもどこか思いつめたような表情をしている彩乃さんに、とても尋ねられる雰囲気ではなかった。
それは、自分の心の思うところに「忠実」な誓子さんをもってしても同じみたいで、時折横目で探るように彩乃さんをちらちら見ているだけだった。
いつになく重い空気に耐えきれず、あたしはお手洗いに行くと言って秘書室を出た。
すると、廊下の先の小会議室の前で、情報システム部の青山がいた。