お見合いだけど、恋することからはじめよう

『……水野さんが来てくれてうれしいよ。
ほら、秘書室はおれら営企とは接点がないからさ。新年会や忘年会も別だし』

赤木さんは屈託なく笑った。

『だからさ、総務に無理を言ってセッティングしてもらったわけ』

くっきり二重(ふたえ)の大きな目を、いたずらっぽく輝かせる。我が社では秘書室は名目上、総務部の管轄だった。

『で……水野さんはなに飲む?』

『あ……同じもので』

あたしは赤木さんの前にあるビールのジョッキを見て言った。

すると、ほかの人たちの目が一斉にあたしに注がれる。

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