お見合いだけど、恋することからはじめよう

『み…水野さん、赤木さんのビールは「生中」じゃないのよ?彼は九州の人だから、めちゃくちゃお酒強いのよ?』

女子席の真ん中に陣取っていた「お局さま」が身を乗り出して言う。彼女の前にはジョッキではなくビアグラスが鎮座していた。

……えぇ、見ればわかります。「大」ですよね?

『水野さんも……もしかして、九州出身?』

大きなジョッキにも顔色一つ変えないあたしを見て、赤木さんが聞いてくる。

『生まれは東京ですが、父が福岡の柳川出身です。小学生の頃は父の仕事の関係で、博多で過ごしました』

あたしがそう答えると、赤木さんがにやりと笑った。そして、ちょうどそのとき、お通しを配膳していた店員さんにオーダーした。


『生大、もう一つちょうだい』

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