お見合いだけど、恋することからはじめよう


赤木さんとつき合って半年ほど経った、今から三年前。

その週の月曜日のお昼休憩に、あたしは同期の法務部の友佳(ともか)から、突然社食とは反対方向の人気のない資料室へ連れて行かれた。

後ろ手でばたん、とドアを閉めた友佳は、

『……ちょっと、七海』

神妙な面持(おもも)ちをしていた。

……ともちんが「七海」呼びするのって、めずらしいな。

いつもは「ななみん」と呼んでいるからだ。

『武田さんと同期の、うちの部の先輩が言ってたんだけどさ……』

友佳はそこで一拍おいて、そして意を決したように告げた。


『この前の土曜日、武田さんと……赤木さん、
「お見合い」したそうだよ』

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