お見合いだけど、恋することからはじめよう
❻
そして連れてこられたところは、ショットバーだった。ここもまた、あの日「お持ち帰り」されたときに来ていたお店だった。
「よかった……ここは、あの頃のままだな」
赤木さんは無邪気に店の中を見渡しながら、年季の入ったハイスツールに腰かけた。
あたしも隣のスツールに座る。
カウンターだけでテーブル席のない鰻の寝床のようなその店は、三年前の面影を色濃く残していた。
「……今となっては、なにもかもが言い訳になるけど」
赤木さんは少年のように綻ばせていた顔を引き締めた。とたんに憂いを帯びた「オトナの男」になる。
「正直、武田専務から彼女との見合いの話があったときは……揺れた」
……なによ、それ?
全然、言い訳にもなってないじゃん。
あたしはカウンターに目を落とした。