お見合いだけど、恋することからはじめよう
というわけで、あたしは今日、アドバイスに従って華丸百貨店で購入したミス・アシダのハニーベージュのAラインの膝丈ワンピを着て、高級料亭の個室でテーブルについていた。
ふわっとパフスリーブに、ウェストが締まって見えるフロントリボンが決め手だった。
今朝、このワンピを着てリビングに現れたわたしを、『七海、なかなか似合ってるじゃないか』『七海、すっごーくかわいいわよぉ』と、親バカ二人が褒め称えた。
お見合いと言っても、父の部下が相手なので、お仲人さんはいない。
「田中君、これが下の娘の七海だ」
なので、隣に座る父があたしを紹介する。
「……水野 七海です。よろしくお願いします」
あたしとともに、父とは反対側の隣に座る母も頭を下げる。
「……田中 諒志です。いつも、水野事務局長には大変お世話になっております」
目の前に座る、写真で見た少し神経質そうな顔の男性が頭を下げた。
やっぱり、すっごーく賢そうな人に見える。
いや、実際にすっごーく頭の良い人なんだろうけど。とても、このような人があたしなんかと話が合うとは思えない。
……それに、写真で見る以上にイケメンだった。