お見合いだけど、恋することからはじめよう

あたしたちは、くーっと一息でガラスのお酒を吞み干した。あたしは、普段は得した気分になるはずの大容量のコリンズグラスを恨んだ。

そのあと、赤木さんがバーテンダーに「うるさくして悪かった」と言いながらお会計を済ませ、奥にいるお客さんたちに「お騒わせしてご迷惑をおかけしました」と、二人で頭を下げて謝った。

幸いなことに、四、五十代と思われる「上司世代」の彼らは苦笑しながらも、
「ケンカしても仲直りしなきゃダメだよ」
「イケメンな彼氏だから、いろいろあると思うけどさ」などと、温かく励まして(?)くれた。

……彼氏ではないんですけれども。

とは思ったが、めんどくさいので訂正はせず、曖昧に微笑んでいたら。

なんだか気をよくした赤木さんが、

「これからこいつに土下座して謝り倒して、なんとか許しを請います」

と、しれっと言うではないか。

とたんに湧き上がる笑い声と拍手の中で、あたし一人が呆れ果てていた。

そうやって場が和んだところで、もう一度頭を下げて、あたしたちは店を出た。

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