お見合いだけど、恋することからはじめよう
「あの……」
突然、母が口を開いた。
「釣書を拝見して、もしかして、と思っていたんですけれど……」
母が勤務先の女子校の名を挙げた。
「……田中 亜湖ちゃんのおうちの方じゃございません?確か……うちの七海よりも二学年ほど下だったかしら?」
どうやら、彼の妹が母の学校の卒業生だったらしい。
「あらっ、もしかして……学年主任の水野先生でいらっしゃいますか?」
お母様が気づいたようだ。
「まぁまぁ、先生……ご無沙汰しております」
「いえいえ、こちらこそ。亜湖ちゃんはお元気ですこと?高等部のとき、生徒会の会計をしてもらっていた頃が懐かしいわ」
「ええ、おかげさまで、亜湖は会社で知り合った方と来月結婚式を挙げますのよ、先生」
「まぁ、そうなのっ!
……それは、おめでとうございます。
ぜひ、亜湖ちゃんにお祝いを申し上げたいわ」
二人はあたしたちをそっちのけで、話し出した。
「……おい、今日は田中君と七海の見合いだぞ」
父が母をぎろっ、と睨んだ。
「……やめんか、こういう場で」
お父様もお母様を睨んだ。