お見合いだけど、恋することからはじめよう

「あの……」

突然、母が口を開いた。

「釣書を拝見して、もしかして、と思っていたんですけれど……」

母が勤務先の女子校の名を挙げた。

「……田中 亜湖(あこ)ちゃんのおうちの方じゃございません?確か……うちの七海よりも二学年ほど下だったかしら?」

どうやら、彼の妹が母の学校の卒業生だったらしい。

「あらっ、もしかして……学年主任の水野先生でいらっしゃいますか?」

お母様が気づいたようだ。

「まぁまぁ、先生……ご無沙汰しております」

「いえいえ、こちらこそ。亜湖ちゃんはお元気ですこと?高等部のとき、生徒会の会計をしてもらっていた頃が懐かしいわ」

「ええ、おかげさまで、亜湖は会社で知り合った方と来月結婚式を挙げますのよ、先生」

「まぁ、そうなのっ!
……それは、おめでとうございます。
ぜひ、亜湖ちゃんにお祝いを申し上げたいわ」

二人はあたしたちをそっちのけで、話し出した。


「……おい、今日は田中君と七海の見合いだぞ」

父が母をぎろっ、と睨んだ。

「……やめんか、こういう場で」

お父様もお母様を睨んだ。

< 37 / 530 >

この作品をシェア

pagetop