お見合いだけど、恋することからはじめよう

「……だけど、こういうのが『御縁』って言うのかしらねぇ」

母がしみじみとつぶやいた。

「そうそう、七海もうちの女子校出身ですのよ。それに、亜湖ちゃんもT女子大に進学されましたわね。確か……数理科学科でしたわよね?」

うちの女子校では「定番」のコースだからね。

……って、げっ、向こうは理系じゃん!?
こっちはおんなじT女でも、底辺の偏差値の学部・学科なんですけれどもっ。

「まぁ、なんて奇遇なんでしょう。ほんと、『御縁』ってこういうことを言うんですのね」

お母様は満開の笑顔だ。

……いやいやいや。「定番」コースなんです。
しかも、こっちは「底辺」ですから。

母親たちがこんな感じになってしまったものだから、父親たちまで話し始めた。

「娘さんが結婚されておうちを出られると、お寂しいでしょう?」

父がお父様に瓶ビールを()ぎながら尋ねると、

「私が名古屋に単身赴任していますので、それでなくても顔を見る機会が少ないのに、嫁になんか行かれると……しかも、一番結婚してほしくなかった男なんかと……」

今度はお父様が父にビールを注ぎながら、苦虫を噛み潰したような表情で答える。


……もしかして、そちらも娘に対して「親バカ」系?

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