お見合いだけど、恋することからはじめよう
「……いやいや、私たちばかりがしゃべっていてもなんですから」
お昼の豪華懐石料理を食べ終えると、おもむろに父が言った。確かに、肝心のあたしたちはほとんど言葉を交わしていない。
……しまった。あまりの美味しさの方に集中しすぎてしまった。
だけど、向こうからも定番の話題である「ご趣味は?」すらない。一応、「映画鑑賞」と「読書」っていうのを考えてきたんだけどなぁ。
映画は邦画よりも洋画の方が好きだ(字幕を目で追うのは疲れるから日本語吹き替えであるが。しかも、家でごろごろDVD派である。)
読書は……せいぜい読むのはケータイ小説かスマホで読むマンガだけれども。
ダメだ。付け焼き刃すぎる……話題を振られなくてよかったかも。
そんなふうに意識を飛ばしていて、急にハッと気づく。
……えっ、ま、まさかっ。
お見合いの「お約束」のあのワードを言うんじゃないでしょうね?