お見合いだけど、恋することからはじめよう

「そうですな……あとは若い者に任せましょうか?」

……げっ、向こうのお父様が言っちまいやがったよ。

「諒志、七海さんを怖がらせちゃダメよ。
あなた、おとうさんに似て仏頂面なんだから」

お母様の言葉に、田中さんが理知的なお顔を歪ませる。

「七海、諒志さんにワガママ言っちゃダメよ?」

……なに言ってんのよ?初対面の人にワガママなんて言うわけないじゃんっ。
ほら、田中さんだって、呆れたような顔してこっちを見てるじゃんよっ!

「本当にすみません。末っ子で、親が甘やかして育ててしまったものですから」

母があちらに頭を下げる。

……「親」ってあんたたちじゃんっ!
あんたたちの「親バカ」のせいでしょっ⁉︎

「いえいえ、七海さんはどことなくうちの亜湖に雰囲気が似てらっしゃるから、初めてお会いした感じがしませんわ」

お母様がふっくらと微笑んだ。

……いえいえいえ、あたしにとってはバリバリ初対面です。緊張しまくりです。

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