お見合いだけど、恋することからはじめよう
「今日は彩乃さん、副社長のお母さまと会食されたんじゃなかったんですか?」
「お姑さん」とサシでごはん食べるくらいなら、なんだかんだ言っても副社長とはうまくいってるんじゃないかと思ってたけれど。
『おふくろとメシを食って別れてから、行方をくらましてしまってね』
「えっ、彩乃さん、もう副社長のご実家で同居されてたんじゃ……」
あたしは絶句する。
『彩乃が行きそうなところは、ほぼ当たったんだが、どこにもいないんだ。時間も時間だし、居場所だけでも把握したい。
……水野、会社内で君のほかに、彩乃と親しい者はいるか?』
あたしは眉間にシワを寄せて考える。
「そうですねぇ……あとは大橋さんですかね?」
『大橋?……彩乃はともかく、大橋の方は目の敵にしてなかったか?』
……いつの時代の話よ?
「大橋さんが『誠子』さんから『誓子』さんになって雰囲気がガラッと変わったので、あたしたち仲良くやってますよ。ランチも一緒に秘書室で食べてますし」
『あぁ、大橋は改名したんだったな』
正しくは「戸籍名に戻した」んですけどね。
『そういえば、おれが昼に秘書室へ行ったとき、君たちは楽しそうに弁当食ってたな』
副社長も思い出したようだ。
「今では彩乃さん、大橋さんとステーショナリーネットの葛城社長の仲を取り持つ、すっかりキューピッドですよ」
彩乃さんのおかげで、彼らはめでたく明日デートです。
『葛城社長は彩乃の幼なじみだからな。
……大橋のほかにはいるか?』