お見合いだけど、恋することからはじめよう
「うーん……そもそも、秘書室のある重役フロアは『隔離』されてますからね。もちろん、社員の人たちとすれ違えば挨拶や世間話くらいはされてますけど。
……あ、でも、彩乃さん、青山のことを」
『……青山?』
こころなしか、副社長の声が険しくなったような?
『あいつ……同じ部署内で二股かけるだけじゃ飽き足らず、まさか彩乃にまでチョッカイ出してんじゃないだろうな!?』
……ひいいぃっ⁉︎ ヤバいよ、青山っ!
あんたっ、副社長にまで、その「行状」が知られてるよっ!
『せっかく史上最悪の空気の情報システム部から、新設したシステム統括本部に「救出」してやったっていうのに』
スマホの向こうから、副社長の舌打ちが聞こえてきた。
……そんな「生活態度」でも、副社長から見捨てられないことの方が驚きなんだけれども。
そんなに替えがきかないほど、青山ってデキるヤツなんだ。
「……いやいやいや、違うんです。
その『二股話』を彩乃さんにしたところ、
『クールで堅物そうな青山くんがそんな人だったなんて、夢にも思わなかったわ』
って驚いてらしたので、青山とは『ない』です。
まぎらわしいことを言ってすいません」