お見合いだけど、恋することからはじめよう

そんな思いを潤んだ瞳に込めて、隣に座る諒くんを見上げる。

諒くんの口元が、ふわっと(ほころ)んだ。
不意に、あたしの頬が大きな手のひらに包まれる。

諒くんの顔が落ちてきて、彼のくちびるがあたしのくちびるにふわっと触れた。

……運転手さんのバックミラーには、バッチリ映ってるだろうなぁ。

あたしの頬は、たちまち気恥ずかしい色に染まっていることだろう。

「まさか自分が、タクシーの中でこんなことをするなんてな」

諒くんがあたしの耳元で、息だけで(ささや)いた。

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