お見合いだけど、恋することからはじめよう
諒くんのくちびるが近づいてきて、あたしのくちびるに、ちゅっ、と触れる。
「ななみん、もう我慢できない……いいよな?」
諒くんがローテーブルの向こうにあるベッドへとあたしを誘う。
「えっ……ちょ、ちょっと待って。
せめて、シャワーを浴びさせて……」
今日一日会社で働いて、しかも(赤木さんに「強制的」に連れ出されたとはいえ)呑みにまで行ってるのだ。それに、赤木さんに触れられたところをちゃんと「浄め」てから、諒くんと愛し合いたかった。
「悪いけど、もう待てない」
諒くんが横長スクエアのリムレスの眼鏡を外す。
「どうせ、海鮮丼すらまだ食ってない『フライング』だしな」
眼鏡越しではない裸眼のままの瞳に、先刻初めて見た妖しい光が、きらり、と走る。
「シャワーなら……あとで一緒に浴びよう」