お見合いだけど、恋することからはじめよう

「へぇ……血の通わない人造人間(サイボーグ)な諒志さんでも『婚約者(フィアンセ)』にはそういうことするんだ」

そう言って、バーテンダーはニヤッと笑った。

先刻(さっき)のキスは、ばっちり見られていたらしい。
あたしの顔が一気に火照(ほて)った。


(かける)、うるさい」

諒くんはカウンターの椅子に腰かけながら、血も凍りそうな氷点下の声で応じた。

促されてあたしも隣の椅子に座る。
それは、一人掛けにしてはやけにゆったりしているアームソファだった。

……座り心地、最高じゃん。

「それに……なんだ、その髪の色は?
バイトばかりしてると聞いたが、ちゃんと大学へは行ってるのか?留年は許さんぞ」

まるで高校のときの「担任」のような口調で、諒くんはバーテンダーをじろり、と睨んだ。

「ちょっと理由があって金髪にしてみただけっすよ。大学にはちゃんと行ってます。それに、今はもう春休みっすから……でないと、じいちゃんの店を継がせてもらえないんで」

バーテンダーが肩を(すく)める。

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