お見合いだけど、恋することからはじめよう

「ななみん、まだこいつしかいないんだからな。
別に緊張しなくていいからね」

バーテンダーの翔くんは、お酒の呑めない高校生の頃から、この店の下働きをしていたそうで、諒くんと親友たちにとっては「弟」なのだそうだ。

俯きがちなあたしの顔を、諒くんが覗き込む。
そして、すかさずあたしの左手を取って、その薬指にちゅっ、と口づけた。

そこにはつい先刻(さっき)、わが国を代表する老舗のホテルでのディナーのときに(仕切り直しの正式な)プロポーズとともに、受け取ったばかりのエンゲージリングが瞬いていた。二人で選んだ、ティファニーのリボンリングである。

センターの大きなダイヤモンドを、両側のロール状に沿ったパヴェダイヤで挟んだデザインのため、センターのダイヤモンドがまるでリボンの結び目のように見える。一目見るなり、即座に気に入った。

でも、かわいいデザインとは裏腹に、いざつけてみると、意外とずっしりとした重みがある。
それがなんだか、諒くんのあたしへの愛の深さような気がした。

そして、右手にはアメシストとダイヤで流れ星をイメージしたかわいいピンキーリングが。
久城(くじょう) 礼子(あやこ)デザインのJubilee(ジュビリー)のリングである。

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