お見合いだけど、恋することからはじめよう
するとそのとき、足早に諒くんが戻ってきた。
「……翔、ななみんに、余計なこと言ってないだろうな?」
血も凍りそうな氷点下の声だった。
しかも、いきなり視線だけで人の息の根を止めるかのような凄まじさだ。
「なにも言ってませんよー」
翔くんは両手を挙げて、ホールドアップの形をとる。そして、諒くんの背後から店に入ってきた人へ、これ幸いと「いらっしゃいませ」と声をかける。
「あ、外で仕事のことで通話してたら、ちょうど来たんだ」
諒くんがその人の方へ振り返る。
……「遊ぶ相手」が、ついに現れたのだ。
だが、しかし。
「えっ……うそっ……」